2008年11月19日水曜日

三河の会の症例 11月10日

1 森先生

症例1
64歳男性
近医にて肝機能異常を指摘され当院紹介受診.
既往歴に高血圧・尿路結石あり.

Labo data
WBC 16920 RBC 474 Hb 13.2 Ht 39.5
CRP 23.1 TP 6.6 Alb 3.6 T-Bil 5.3 D-Bil 3.8 AST 35 ALT 142 ALP 1006 γ-GTP 369 Amy 29 BUN 20.1 Cre 0.76
Na 138 K 3.6 Cl 104 
CA19-9 >1200






3週間後のCT
CA19-9も34.2に減少.
胆嚢摘出術へ.

手術所見
術中ゲフリールではリンパ節(12c),胆嚢ともに悪性認めず.炎症強く,胆嚢床部の胆嚢は切除できず.遺残胆嚢は電気メスで焼却.

病理結果
・ 胆嚢壁は漿膜下層の線維化により肥厚.
・ リンパろ胞の形成を伴う慢性炎症性細胞浸潤やRokitansky Aschoff洞が観察される.
・ #12cリンパ節は大部分が脂肪組織からなり,その辺縁に線維化や炎症性の細胞浸潤を伴う.
・ 明らかな悪性所見はいずれも認めない.

急性胆嚢炎とCA19-9
・ CA19-9は消化器ca.由来の培養細胞と特異的に反応する抗モノクローナル抗体.胆嚢粘膜にも認められる.
・ 胆嚢管の流出障害により胆嚢で産生されたCA19-9は間質や血中に逸脱する.
・ 多くは100U/ml以下の低値だが,1000U/mlを超える症例も報告されている.
・ 以上よりca.がなくても胆石症や胆嚢炎など流出傷害を来す疾患の場合,CA19-9が異常高値を来しても矛盾ない.

考察&Tips
・ 胆石症や閉塞性黄疸が認められる症例ではCA19-9は異常高値を示す可能性がある.
→むやみに腫瘍があるとレポートには書かない
→減黄時に再度再検することが望ましい 
・ 今回の症例では画像にて胆嚢内腔が保たれているのがわかり(特にDynamicT1wI),術前評価としてDynanic造影を含めたMRIが有用であることが示された.
・ steady state gradient echo法,いわゆるB-TFE(GEだとFIESTA)はT2wI,MRCP,GdT1wIなどと比べ,胆石の描出および周囲構造との関係を把握しやすいと思われる.


症例2
48歳女性

現病歴 08年3月 右乳腺腫瘤に対し右乳腺部分切除&センチネルリンパ節(SLN)生検施行. pure mucinous ca.(径15mm大 )と診断される. 断端陰性. 腋窩廓清はSLN(-)のため省略. 同年9月 腋窩の腫大訴え, 精査.

検査値
CEA: 17.1(2/25(術前))→22.9(5/7)→37.8(7/2)→40.7(8/26)
NCC-ST-439(7未満): 4.7(2/25)→6.6(9/9)
BCA225(160未満): 58(2/25)→75(9/9)






その後の経過
9/13 level3, rotterを含めた腋窩廓清+小胸筋合併切除(児玉法)施行. →粘液癌再発.

粘液癌のリンパ節転移
粘液癌, 特にpure typeのリンパ節転移は低い.(IDC:44~50% pure mucinous ca.:10~14%)
またpure typeのリンパ節転移は腫瘍径に相関し, 径20mm以下ではほとんどみられない.
上記より, 今回の症例に対しSLN生検を適応することは妥当性がある.
(塩沢幹雄他:乳癌の臨床 21:467-473,2006)

センチネルリンパ節同定の問題点
・術者の技倆.
・同定方法によりミスマッチ.
・トレーサー粒子径
・shine-through phenomenon
・watershed
・術中迅速診断の限界.
・skip metastasis.(きわめて稀)
(野口昌邦:乳癌センチネルリンパ節生検 金原出版株式会社)


2 佐竹先生

症例1
70代女性 大腿ヘルニアの嵌頓




症例2
50代男性 内鼡径ヘルニア(直接)



両者の鑑別にはヘルニア嚢が恥骨結節部を超えているかどうか(大腿ヘルニアでは超えない)と大腿静脈の圧排の有無が鑑別に有用です。
参考文献:AJR:189,August 2007 W78-W83

3 浅井先生

症例:33才、女性

右乳癌:当院来院時、すでに小肺転移複数あり。乳房切除後、化療施行。右腋窩に腫瘤が出現し、胸壁と右腋窩に放射線治療を施行。
約1年後、自宅療養中に右腋窩に大量出血。一時圧迫止血するも、再度出血。




画像(造影CT,CTから作成した3D像)

血管造影:
(1)鎖骨下動脈から明確な血管外漏出。この末梢は細く、不明瞭。
(2)胆管用covered stent2個で止血。(末梢は細い)
(3)翌日、朝より右前腕から先の変色あり。同夕方の造影で上腕動脈1/2以遠の血栓塞栓、ステント内血栓形成、ステント重挿部近傍からの漏出がみられた。親カテを鎖骨下動脈近位におき、子カテーテルを上腕動脈において、ウロキナーゼを流す。
(4)1週間様子見るも、手指の壊死は進行のため、カテーテルを抜去。上腕動脈およびステント内は子カテの腔を残して血栓化。

※(1)の時点で、血圧測定不能、意識混濁状態であったが、20日後の現在、止血状態は保たれ、右手指は壊死し、上肢は麻痺状態ながら、歩行、左手での食事が可能で、外出もできるようになっている。


4 小林先生

症例1
27才 女性
妊娠8週 妊婦検診で両側の卵巣腫瘍を指摘された.
両側とも脂肪成分を含み,術前はdermoid cystを考えたが,左卵巣腫瘍は充実成分がやや大きく非典型的であった.



手術結果;右卵巣はdermoid cystであったが,左側はdermoid cyst と yolk sac tumorの合併であった.
文献によると yolk sac tumor の14%にdermoid cyst が合併するとのこと.


症例2
43才 男性
10年前から頭部に皮下腫瘤が2ヶあり,何度か穿刺吸引してもらっていた.最近吸引できなくなり紹介受診となった.


腫瘤はCT上,軟部吸収値と,脂肪吸収値(やや不均一)を呈していた.MRIではT1WIにて低~一部高信号,T2WIにて高信号~著明高信号であった.いずれも造影されない.
手術結果;いずれもepidermoid cyst であった.

2008年11月4日火曜日

三河の会の症例 10月6日

1)浅井先生

66才、女性。

気管支拡張症、左肺慢性壊死性肉芽腫性変性の病態。在宅酸素療法中。
喀血を繰り返し、12年前の初回から6回の動脈塞栓術を行っている。

塞栓動脈は、左右の気管支動脈、内胸動脈、胸壁枝、肋間動脈、左肝動脈枝、左下横隔動脈。
左冠動脈造影で、前下行枝、回旋枝の分岐近傍から屈曲蛇行する側副路の発達がみられた。また、回旋枝末梢からも細い側副路がある。これらは、将来的にsteal syndromeを起こすリスクがある。
肋間動脈や左下横隔動脈からの側副路は、左肺動脈を逆行し、右肺動脈に流れ、左房左室が造影されるという血行動態である。

喀血は、体循環系動脈→肺動脈への短絡による肺動脈圧上昇から出血するもので、肺静脈への短絡ではない。
肺の慢性炎症は、求酸素病変であり、この動態は合理的である。








2)佐竹先生

70代男性 CTコロノグラフィ(単純)
膵鈎部ca.、多発肝転移






3)渡辺

1歳10ヶ月 男児
代謝性アシドーシス発作

遅発型メチルマロン酸血症(常染色体劣性遺伝)




68歳 男性
3−4年前から言葉の認識ができなくなってきた。
読書は可能だが、聞き取りが悪い。筆談で会話が可能である。皮質性失語の状態である。

papillary glioneuronal tumor (PGNT 乳頭状グリア神経細胞性腫瘍)
superficial siderosisを伴っている。